アジア国際都市デザイン・ワークショップ
WORKSHOP OF PLANNING AND URBAN DESIGN IN ASIA

 国際都市計画・デザイン・ワークショップは、都市計画及び都市デザイン(まちづくり)に関わる若手の専門家の育成と交流を目的として、1982年よりヨーロッパを中心に過去18回開催されてきた国際ワークショップである。さらに1997年より同様の目的のもとにアジアの都市においても開催されるようになり、年にヨーロッパとアジアで2回開催されている。
 国際都市デザイン・ワークショップの事務局は、フランスのパリ郊外にあるニュータウン・セルジポントワースの都市開発公社にあり、フランス政府が全面的にバックアップしている。これまでヨーロッパとアジアのワークショップを合わせて22回開催され、参加者は40ヶ国119大学から合計692人の学生(主として大学院生)が参加している。加えて世界中から250人の専門家が指導、講評・審査、セミナーなどに参加している。  アジアにおける都市デザイン・ワークショップは、都市づくりを通しての交流の輪をさらに拡大し、ヨーロッパにおけるワークショップの成果をアジアの都市においても広く展開しようとするもので、毎年開催都市との共同主催というかたちをとっている。またワークショップは、参加者の参加費に加え、開催都市の地方政府や民間企業のスポンサーシップにより運営されている。

 過去のワークショップでは、毎年世界十数カ国の大学から選抜された(原則的に1大学から2名以内)都市づくりに関連する分野(建築、都市計画、ランドスケープ、土木など)の約40人の若手専門家(多くが大学院在籍の学生)が参加し、開催都市の行政担当者や専門家の協力のもとで、4週間のワークショップを行っている。テーマは毎年開催都市における現実の課題を採り上げ、前半はフィールドワークや課題の分析・評価、後半はそれに対する提案を行うというフォーマットとなっており、提案は国際審査員によるコンペとなっている。世界各国から参加した若手専門家達は、国や専門分野をバラバラに5〜6人程度のグループに分けられ、文化や経験の異なるメンバーによる共同作業が求められている。4週間のワークショップでは、地元自治体及び大学の協力の下で国際的な専門家グループが指導に当たっている。

 これまでのアジア都市のワークショップでは、ワークショップの成果の発表・審査会と併せて、ワークショップの関連テーマのシンポジウムが開催されており、これには世界十数カ国の国際的な専門家が参加している。過去4回のアジア都市で開催されたワークショップでは、開催都市において最も注目されている現実の課題及びプロジェクトをテーマとして採り上げていることもあり、開催都市における都市づくりの議論の活性化やアイデアの豊富化に寄与しており、地元自治体からも非常に評価される成果を上げてきている。また、本ワークショップは、参加した若手専門家はもとより審査委員や関連シンポジウムに参加した国際的な専門家の交流ネットワークの機会としても評価されている。過去4回開催されたアジアにおけるワークショップは以下の通りである。

 1997年:ヴェトナム・ハノイ市 「ハノイ市郊外の新都市センター開発」
 1998年:ヴェトナム・ホーチミン市 「ホーチミン市とサイゴン川河岸地域開発」
 1999年:中国・広州市 「高密度都市居住の都市計画」
 2000年:中国・上海市 「大都市における生活の質と大規模イベントの役割」

 第5回のアジアにおける国際都市づくりワークショップは、2001年10月29日〜11月23日タイ北部のドイトンにおいて「ツーリズム、歴史遺産、持続可能な開発」をテーマに開催された。今回は、テロ事件の影響もあり直前に参加をとりやめたヨーロッパの学生が約10名程いたため、参加者は26名と例年より少ない人数であったが、日本の大学からも建築学系大学院生4名と、教員2名が講評・審査員として参加した。ゴールデントライアングルと呼ばれる地域の一部に位置し複雑な歴史的な背景を有するタイ北部の少数民族の住む山岳地域における地域振興を目的とする将来の開発計画を検討する難しい課題に取り組んだが、異なる国から参加した学生のコラボレーションにより非常に質の高い提案がなされ、地元の関係者からも高い評価がなされた。

 アジアにおける第6回目のワークショップは、2002年10月28日から11月23日の4週間、東京において東京都との共催で開催する予定である。東京のワークショップのテーマは、「密度・都市形態・生活の質:密集市街地の再生(Density, Urban Form and Quality of Life : Renovation of High-Density Urban Neighborhood)」で、墨田区鐘ヶ淵地区と港区白金地区の2地区をケーススタディ地区に予定している。

(文責:工学院大学建築都市デザイン学科 倉田直道)


上へ