フランスの建築・都市計画関連教育機関(1)
社会科学高等研究院

EHESS: Ecole des Hautes Etudes en Sciences Sociales

URL: http://www.ehess.fr/
E-mail: scolarite@ehess.fr
住所: 54 boulevard Raspail, 75006 Paris
電話/Fax: 33 (0)1 49 54 23 21/33 (0)1 45 44 93 11(博士課程係)




社会科学高等研究院(以下EHESS)を建築・都市計画関連教育機関と呼ぶには無理がある。そもそもその名の通り社会科学の研究機関だからだ。従ってその方法論に立脚しながら建築や都市計画に関する研究をするわけで、その切り口は広範なものとなる。よってここで紹介するのは筆者の狭い在籍体験であり、さらなる情報は上記のURL等で得て頂きたい。
まずEHESSは大学院大学である。しかも修士課程(ma杯rise)はなく、1年間で博士論文の基本方針と研究者への適性を示すことが課題の博士論文提出資格取得課程(DEA: Dipl冦e dユEtudes Approfondies の意訳)と博士課程(doctorat)のみである。後者に進学するためには前者の総合成績が、passable-assez bien-bien-tr峻 bien の合格4段階評価のうち bien 或いは tr峻 bien でなければならず、さらに教官毎に入試がある。フランスではDEA取得まで大学入学後最短で5年だから、日本で修士課程を修了していれば直接博士課程に入学させてくれても良さそうなものの、まず必ずDEAをやらされ、あまつさえ、筆者もそうであったが語学力不足を理由にDEAに2年かけさせられることとなる。博士課程は最短3年だが、課程博士でもその期間内に取得できる人は稀で、留年は原則として1年のみである。また、国家博士号(doctorat dユEtat)がなくなった現在論文博士は存在せず、必ず1年は博士課程に在籍しなければならない。
前置きが長くなったが、教育の内容は言えば日本と同様である。即ち指導教官の授業に出席し、たまに廻ってくる発表をこなしてゆく。
特記しておきたいのは、日本と異なり研究室という学生の溜まり場がない点で、これはEHESSに限らずいずこも同様のようだから、それ以外の時間の管理が大切になる。筆者は主に朝9時に開館するソルボンヌ図書館と、夜10時が閉館のサント・ジュヌヴィエーヴ図書館で過ごした。
筆者が師事したのは比較文化論で日本でも著名なオギュスタン・ベルク先生だったが、研究室がなく学友との議論もカフェ等でのそれに限られ、1年に2、3度しか廻って来ない発表も2時間程度だし、先生は放任主義で細かい点は言及されないため、DEA論文提出以降毎年その年の研究成果を論文の体裁に書き直し、特別に読んで頂いた。それらを総括したのが満期の4年目の末に提出した学位論文である。
EHESSの博士論文の審査員は必ず外部から招かねばならず、博士号を所有していることに加え、その審査能力(habilit氏jを認められた研究者に限られる。また審査委員長は外部の審査員に限られ、審査記録もその人が書く。審査会は最後まで怪しげな仏語だった筆者にとっては地獄で、30分程のプレゼンの後に各教官30分程の質疑応答のはずが、教官によっては長々と攻められ、また教官同士で議論が始まるなどして、結局4時間近くかかった。
そのわりには修了証書は単なるA4の紙切れ1枚のみである。(鳥海基樹)

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